標高九百五十五メートルの雷山は福岡、佐賀両県にまたがる背振山系の西先端にあり、現在の雷神社のご神体は水火雷電神、即ち雷神が祀ってあります。凄まじい雷鳴が響き、稲妻が天空を走り、落雷が峯に火柱を上げ、激しい雷雨に見舞われることもしばしばです。古(いにしえ)の人々が自然の畏敬の念から雷神を祀ったことは想像に難くありません。
貝原益軒の『筑前國續風土記』には「凡雷山は山櫻多く、寺にも八重櫻有て、花のさかりはいと興あり。都近き所ならましかは、古人の吟賞にもあづかり、誠に山のかひあらん所なるをや。かかる高山深谷の僻所の内にも、此佳境ある事めつらし。「山川好處造化惜不許二世人平地看」と古人のいへりしもかかる所なるへし。いとまある人は尤遊賞すへき所也」とあり、雷山の自然の美しさを称え、特に青柳種信等が編纂した『筑前國續風土記拾遺』には「律院(注・現大悲王院)の辺十そは花樹多く、秋ハ楓葉愛すべし、わけて霜後のながめ他に勝れたる佳境也」とあり、江戸時代から当院の楓を多くの人々が愛(め)でていたのでしょう。
ここに当院の四季を紹介します。春の新緑、夏の清涼、秋の紅葉、冬の積雪。「山川草木国土悉皆成仏」というお言葉があります。ご本尊を始め当院に祀る多くの仏様とともに当院の境内にある樹木や四季の移ろいもまた、私達に生命の輝きと尊厳を教えているのではないでしょうか。
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